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2004年02月05日

蟹のカノン

crub_canon「2声の逆行カノン」(J.S.バッハ)
ちょっと楽譜作ったので置いておきます。
画像をクリックすると大きいサイズになりますが、その前に、ここをクリックして曲を聞いてみて下さい。
自動的にScorchプラグイン(楽譜演奏)がインストールされるはずです。
さあ、どうなっているか考えましょう。

この蟹のカノンは「ゲーデルエッシャーバッハ/ダグラス・R・ホフスタッター著」(白揚社)にも登場する作品で、フリードリッヒ大王が主題として与えた8小節をバッハがあっという間にこんな曲にしちゃったという曰く付きの作品です。さすがに天才ですね。

蟹のカノンですが、ギタリストでは、かの天才、山下一仁氏が録音しています。(聞いてないけど)

ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環

同書ではエッシャーの蟹のカノンの絵の他に、以下の会話も登場します。この話しもすごい。

アキレスと亀が、ある日、散歩の途中で出くわす。

亀:いい日だな、アキ公。
アキレス:まったくだ。
亀:いいところで会ったよ。
アキレス:僕もそう思ったところさ。
亀:それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
アキレス:ほんとかい?歩くのが何よりいいらしいな。
亀:ところできみは近頃ずいぶん溌剌としているじゃないか、ほんとに。
アキレス:嬉しいことをいってくれるね。
亀:そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?
アキレス:きみも俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?
亀:同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの画家、M・C・エッシャーの『蟹のカノン』、このあいだとある画廊でやっと見たよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかし僕としてはバッハのほうがエッシャーより上だという気がいつもするんだ。
アキレス:どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくは趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。 De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]
亀:どんなふうなんだい、きみの年頃というのは?ぜんぜん悩み事がないというのは本当かい?
アキレス:正確にいえば、杞憂《きゆう》がないね。
亀:同じものだと思うがね。
アキレス:それが庭訓《ていきん》ならの話だが、たいへんな違いさ。
亀:おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
アキレス:ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、要らんギターにさわるなんてのは!

(突然、蟹がとこからともなく現れ、片方のやや飛び出した黒い目を指差して興奮しながらやってくる)
蟹:やあ、やあ!どうしてるかね?元気かい?見えるだろう、このこぶ、この腫れあがり?怒りん坊にちょうだいしたんだ。ふん!こんないい日だってのに。ぶらぶら公園を歩いててさ、イラン生まれのばかでかい男によじのぼったんだ - 身の丈三メートルの大男よ、いやまったく。こいつのところへすたこら行って、大空めがけてよじのぼり、やっと膝小僧を叩いて言ってみた。「失礼ながら、だんな、そのリュートの曲はマズルカでしたっけ、マズイナでしたっけ?」ところが、ああ!やつはユーモアのセンスがないときた - これっぽっちもありゃしない - そしてガツン! - やつはおれさまをふり払い、目に一撃くらわせやがるじゃないか!おれさまの性格がそうなら何蟹《なにかに》かまわずカニャローッと怒るところだが、そこはわが種族の由緒ある伝統、おれは後退りした。要するに、われわれは前進するとき後退する。それがわれわれの遺伝子さね、ぐるぐるぐるぐるまわるわけだ。それで思い出した - いつも考えてるんだがね、「どっちが先にきたのか - 蟹か、遺伝子か?」つまり、「どっちがあとからきたのか - 遺伝子か、蟹か?」おれはいつも、ものごとをぐるぐるまわしてみるんだよ。それがわれわれの遺伝子だな、要するに。われわれは、後退するとき前進する。おっとっとっ!そろそろ行かなくちゃな - なんせこんないい日和だ。蟹の人生をたたえて歌ってくれん蟹《かに》!ターター!オーレー!
(現れたときと同じように突然姿をくらます。)

亀:ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、イラン・ギターにさわるなんてのは!
アキレス:おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
亀:それが提琴《ていきん》ならの話だが、たいへんな違いさ。
アキレス:同じものだと思うがね。
亀:正確にいえば、弓《きゅう》がないね。
アキレス:どんなふうなんだい、きみの年頃というのは?ぜんぜん悩み事がないというのは本当かい?
亀:どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくは趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。 De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]
アキレス:同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの作曲家、J・S・バッハの『蟹のカノン』、このあいだとあるコンサートでやっと聴いたよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかし僕としてはエッシャーのほうがバッハより上だという気がいつもするんだ。
亀:きみも俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?
アキレス:そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?
亀:嬉しいことをいってくれるね。
アキレス:ところできみは近頃ずいぶん溌剌としているじゃないか、ほんとに。
亀:ほんとかい?歩くのが何よりいいらしいな。
アキレス:それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
亀:僕もそう思ったところさ。
アキレス:いいところで会ったよ。
亀:まったくだ。
アキレス:いい日だな、亀公。

Posted by mugen at 2004年02月05日 04:35 | TrackBack
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